052:戒(柳原恵津子)

閉ざしたる窓、その内のひとりきりの戒厳令をわたしのために

051:たいせつ(柳原恵津子)

はじめての白髪は恩寵のようでたいせつにジップロックにしまう

参加します(柳原恵津子)

毎年、楽しませていただいております。 ぎりぎりで恥ずかしいのですが、行けるところまで、参加したいです。 どうかよろしくお願いいたします。

050:頻(柳原恵津子)

震度6が頻発をするこの島のこの時代に子らを産みてあり

049:岬(柳原恵津子)

まさに突き破って生まれたというべき岬のような額の君だ

048:センター(柳原恵津子)

家庭教師センターへ夫を見送りぬ裏道で抱擁せし後に

047:持(柳原恵津子)

もう母に期待をしなくなって子が遠足の持ち物をあつめる

046:賛(柳原恵津子)

かぎりなくさびしき道だ賛成とも反対とも君に聞かぬ旅

045:桑(柳原恵津子)

この街に生きるさびしさ桑畑を桑の実をみたことのないこと

044:発(柳原恵津子)

どうか君が発熱をしませんように死んでしまう、ととてもこわいから

043:ヤフー(柳原恵津子)

YouTubeの動画をヤフーで検索するおさなごの夜土曜日曜

042:尊(柳原恵津子)

出来事が文字を蹂躙することのありてたとえば尊の文字など

041:一生(柳原恵津子)

ああ、これは不実、と思う一生という言葉不意に口に出せば

040:跡(柳原恵津子)

はつふゆの遊歩道にはなないろの足跡きみと踏みながらゆく

039:鮭(柳原恵津子)

いつの間にか作らなくなった献立に筑前煮茶碗蒸し鮭チャーハン

038:華(柳原恵津子)

栄達も栄華もからっきし要らぬぜーんぶ投げて君に帰りたし

037:宴(柳原恵津子)

兼業の母の子であれば宴会も飲み会も知りつつ育ちゆく

036:ふわり(柳原恵津子)

スカートをふわり揺らして歩み行く北の魔女の忠実なるしもべ

035:因(柳原恵津子)

何者にもならないといえば原因とずっと同衾ができるのですか

034:由(柳原恵津子)

泣いている理由を問えどおさなごはひたすらに腹を蹴り上げるばかり

033:連絡(柳原恵津子)

風邪をひきし子を休ませるためですら連絡帳を託す人が要る

032:叩(柳原恵津子)

とらえどころなきものの萌芽おさなごが人を叩きたがる冬である

031:栗(柳原恵津子)

給食やおやつの話聴きながら御栗林をあるいてゆきぬ

030:噴(柳原恵津子)

噴煙をあげる山々の映像を眺める他のなき冬である

029:スープ(柳原恵津子)

買うべきか買うべきじゃないか逡巡しオニオンスープを買って帰りぬ

028:塗(柳原恵津子)

実に妙な毎日だった塗り絵などいくらでも買ってやった暮らしは

027:炎(柳原恵津子)

絵が好きなおまえじゃないが炎の絵をおまえが描いたことのないこと

026:応(柳原恵津子)

戦争といえば応仁の乱であるたとえばそういう職掌だった

025:がっかり(柳原恵津子)

がっかりという顔の上手き親友を拾いし日、からの平行世界

024:維(柳原恵津子)

たずねたきたよりたき弱き朝には王維詩集を書架よりえらぶ