2013-11-01から1ヶ月間の記事一覧

070:柿(柳原恵津子)

降り止まぬ柿の落ち葉をくぐりゆく私は君を語りてゆかな

069:視(柳原恵津子)

帰り口がないなんて幻視 係員に訊けば意外な場所を指さす

068:兄弟(柳原恵津子)

ねこバスのキーホルダーと付箋紙を兄弟はおみやげに選んで

067:闇(柳原恵津子)

透きガラス観ればひらめく闇ありて気がつけば子を待たせておりぬ

066:きれい(柳原恵津子)

きれいだね、きれいだね、と繰り返すふたり指紋を合わせるように

065:投(柳原恵津子)

カタカタとフィルムまわして子は去りぬわたしも真似て像を投じる

064:刑(柳原恵津子)

壁一面にキキのソフィーのイメージ画がありて描くとは甘美なる刑

063:以上(柳原恵津子)

ホットドッグとポテトとスープをこれ以上食べられぬほど地上で食らう

062:氏(柳原恵津子)

ウル・ラピュタの氏にすこしだけ焦がれその紋章に君と触れたり

061:獣(柳原恵津子)

獣にも人にもあらずオリーブより大きなロボット兵が神なりき

060:何(柳原恵津子)

天空の庭にすすきの穂は揺れてただ手をつなぎおり何もいわずに

059:永遠(柳原恵津子)

蔦の這うらせん階段を永遠に永遠に空へとのぼりゆく

058:秀(柳原恵津子)

ねこバスに頬ひからせてのぼる子の秀でてはおらぬそののぼりっぷり

057:衰(柳原恵津子)

盛も衰ももう昔、されどゾートロープ塔を鳩らは飛びたちてやまず

056:善(柳原恵津子)

立て膝で小窓覗けば善き作業場のレプリカみかん箱など積まれて

055:駄目(柳原恵津子)

おさな子が覗き、聞き、くぐるその後を「もう駄目」と言いながら追いたり

054:商(柳原恵津子)

翡翠色のドアノブ、クランク、ステンドグラス 猛き商人の夢の城はも

053:受(柳原恵津子)

受付の椅子に大きなトトロいて子は目をきらめかせつつ、止まれり

052:ダブル(柳原恵津子)

ジブリの森の入り口は地下 石段をフラットダブルフラットとくだる

051:般(柳原恵津子)

「一般のお客様」として美術館に列なす時の船に乗る心地

050:互(柳原恵津子)

居住地をメールし終えて西の空東の空を交互に眺む

049:括(柳原恵津子)

憎むべきものは見えねば憎しみをひと括り 匂いすぎる残飯

048:アルプス(柳原恵津子)

感傷は尽きぬが南アルプスの水を飲む 東から来る客車

047:繋(柳原恵津子)

庭師には庭師の心 繋がらずあった電話も恩恵と思う

046:間(柳原恵津子)

稜線を見れば泣くから電車待つ間は東ばかりを向いて

045:喋(柳原恵津子)

お喋りをしていて欲しい種ほどの憎しみが空を裂かないように

044:日本(柳原恵津子)

IKEAより日本の家具が頃合いで表情も大きくはないだけ

043:慣(柳原恵津子)

ガムテープを慣れた手つきで剥がしては両目の上に何枚も貼る

042:若(柳原恵津子)

そっちへは行きたくないなこの若葉の並木抜けたら焼けあとの家

041:カステラ(柳原恵津子)

ほろほろと刺せば崩れるカステラのような感情が胸にある