010:玉(柳原恵津子)
玉藻なす漂う君の髪梳いて泳ぐのは止めだねと茂木の湯
009:異(柳原恵津子)
家族らのサンダル干さん 夏ごとに異常気象となぜ泣いたろう
008:ジャム(柳原恵津子)
故郷から杏のジャムがまた届くジャムだけが君の知りゆく我で
007:度(柳原恵津子)
なめらかにレンズの度数上げられて「これでしょう」世界がひとつ届きぬ
006:婦(柳原恵津子)
浮かんでははぜる真烏賊の天婦羅のお前は深く沈んでいろよ
005:中心(柳原恵津子)
やわらかなドーナツ生地の中心がふさがるような朝に立ちおり
004:栄(柳原恵津子)
寄る辺なく栄螺の殻を突きあえばむかしむかしの海の香ぞする