010:玉(柳原恵津子)

玉藻なす漂う君の髪梳いて泳ぐのは止めだねと茂木の湯

009:異(柳原恵津子)

家族らのサンダル干さん 夏ごとに異常気象となぜ泣いたろう

008:ジャム(柳原恵津子)

故郷から杏のジャムがまた届くジャムだけが君の知りゆく我で

007:度(柳原恵津子)

なめらかにレンズの度数上げられて「これでしょう」世界がひとつ届きぬ

006:婦(柳原恵津子)

浮かんでははぜる真烏賊の天婦羅のお前は深く沈んでいろよ

005:中心(柳原恵津子)

やわらかなドーナツ生地の中心がふさがるような朝に立ちおり

004:栄(柳原恵津子)

寄る辺なく栄螺の殻を突きあえばむかしむかしの海の香ぞする

003:要(柳原恵津子)

妹と海辺のドラマ観て居りぬ要潤を「キャナメっ!」と呼びつつ

002:急(柳原恵津子)

冬晴れの空と梢と友の町急坂の七分目より見遣れば

001:呼(柳原恵津子)

呼ばれない呼ばないままに集まってお皿を満たしつづける齢(よわい)

参加します。(柳原恵津子)

いつもありがとうございます。最近駆け込み投稿ばかりですが、今年はゆっくり歌作、投稿していきたいです。 今年もどうかよろしくお願いします。

完走報告(柳原恵津子)

ありがとうございました!感謝!!

100:最後(柳原恵津子)

ポンデリングの最後に食べる一粒を家族みんなでまだ見つめおり

099:観(柳原恵津子)

観覧車まわれよまわれあした行く沖をてっぺんから愛そうよ

098:吉(柳原恵津子)

吉報をひとつ携帯にうけておさなごに食べるべきものを聞く

097:陽(柳原恵津子)

小春日の陽があたたかいこの午後にわたしの影をひとつ隠すから

096:翻(柳原恵津子)

伸びっぱなしの髪翻しゆきずりのゆきずりたる能力に殉ぜよ

095:運命(柳原恵津子)

運命とやがてことばにしなくなり本当の運命が根を張る

094:雇(柳原恵津子)

しぶいしぶい顔をあなたはするだろう雇用とか職とかの話に

093:印(柳原恵津子)

君の姓は草原の木蔭もらいうけし印をわたしの分霊、と決める

092:勝手(柳原恵津子)

うたがいの眼差しは雨みたいだからうたがいがかわくほど身勝手を

091:覧(柳原恵津子)

図書館の閲覧室で知りし私たちの十五年のちの常用薬よ

090:布(柳原恵津子)

いちまいの布を窓辺に帆のようにかざしてたったひとりの船出

089:煽(柳原恵津子)

海風に煽られる君の髪などを痛いほど知る見知らぬままに

088:七(柳原恵津子)

七歳の君は生きるよ三年生の男の子にやりこめられながら

087:故意(柳原恵津子)

故意じゃないことばかり選ぶという故意を海岸につくまで繰り返す

086:魅(柳原恵津子)

雨雲に魅入られっぱなしなるひと世わらう他ない人形でいたい

085:遥(柳原恵津子)

それは見てきたように母子で語るなり遥かかなたの国の話を

084:皇(柳原恵津子)

七歳の君は生きるよ皇太子をめんたいこって読みちがえながら

083:射(柳原恵津子)

射貫かれることより苦く青空を思慮のなき顔でみあげるばかり