玉藻なす漂う君の髪梳いて泳ぐのは止めだねと茂木の湯
家族らのサンダル干さん 夏ごとに異常気象となぜ泣いたろう
故郷から杏のジャムがまた届くジャムだけが君の知りゆく我で
なめらかにレンズの度数上げられて「これでしょう」世界がひとつ届きぬ
浮かんでははぜる真烏賊の天婦羅のお前は深く沈んでいろよ
やわらかなドーナツ生地の中心がふさがるような朝に立ちおり
寄る辺なく栄螺の殻を突きあえばむかしむかしの海の香ぞする
妹と海辺のドラマ観て居りぬ要潤を「キャナメっ!」と呼びつつ
冬晴れの空と梢と友の町急坂の七分目より見遣れば
呼ばれない呼ばないままに集まってお皿を満たしつづける齢(よわい)
いつもありがとうございます。最近駆け込み投稿ばかりですが、今年はゆっくり歌作、投稿していきたいです。 今年もどうかよろしくお願いします。
ありがとうございました!感謝!!
ポンデリングの最後に食べる一粒を家族みんなでまだ見つめおり
観覧車まわれよまわれあした行く沖をてっぺんから愛そうよ
吉報をひとつ携帯にうけておさなごに食べるべきものを聞く
小春日の陽があたたかいこの午後にわたしの影をひとつ隠すから
伸びっぱなしの髪翻しゆきずりのゆきずりたる能力に殉ぜよ
運命とやがてことばにしなくなり本当の運命が根を張る
しぶいしぶい顔をあなたはするだろう雇用とか職とかの話に
君の姓は草原の木蔭もらいうけし印をわたしの分霊、と決める
うたがいの眼差しは雨みたいだからうたがいがかわくほど身勝手を
図書館の閲覧室で知りし私たちの十五年のちの常用薬よ
いちまいの布を窓辺に帆のようにかざしてたったひとりの船出
海風に煽られる君の髪などを痛いほど知る見知らぬままに
七歳の君は生きるよ三年生の男の子にやりこめられながら
故意じゃないことばかり選ぶという故意を海岸につくまで繰り返す
雨雲に魅入られっぱなしなるひと世わらう他ない人形でいたい
それは見てきたように母子で語るなり遥かかなたの国の話を
七歳の君は生きるよ皇太子をめんたいこって読みちがえながら
射貫かれることより苦く青空を思慮のなき顔でみあげるばかり