2014-11-30から1日間の記事一覧
われの右側のあなたの右側の甘夏のワゴン販売の声
午後の雨の多き霜月前髪をしっとり濡らし子は帰り来ぬ
電話はいや。新聞やさんにもでない。排水管清掃からも逃げる。
ずっと沼を歩きつづけたその先の発光をはじめそうな匂い、を
書いて書いて手帳を埋める己が身を愛するためのメソッドとして
まきびしが転がる日々のつかの間をうさぎリンゴのための塩水
もう君は大きいのだからそんな走って来たら大砲の弾みたいだ
ほどほどに付き合うことを子も知りて妖怪体操第一ができる
下町の産院の医師なりし祖父のわたしは生まれ変わりだという
仄暗き水槽に子は見入りたりショーを終えし白イルカ二頭の
新生児用体重計にモンチッチを乗せおり倉庫に身をかくす日は
懲役と死刑を秤にかけた上での7人の殺害だという
雨上がりのお芋畑のお土産は大きな芋と泥んこズボン
徒競走は嫌、でも五年目になれば惨敗ののちの顔も晴れやか
お金のないはじまりだったねうえの子は埼玉県西川口生まれ
またいなくなるから手紙書かなくては余白を近ごろはひからせる
壁中におされた小さな手形では驚かないとても芸術的だね
照りながら降る雨がみたい光もない水もない温度もない食事
うまいよ、と自慢も出るね女の子用ラケットに藍のテープを巻きぬ
閉ざしたる窓、その内のひとりきりの戒厳令をわたしのために
はじめての白髪は恩寵のようでたいせつにジップロックにしまう